文字を消したあと、黒い線はどこへ行ったのでしょう?

鉛筆(えんぴつ)の線を消すと、机の上に小さなくずが残ります。散らかる原因に見えるそのくずは、消しゴムが次の線を消すための、新しい表面(ひょうめん)を生む過程でもあります。

ここで見るのは、こするとくずが出る、普段の鉛筆(えんぴつ)用の消しゴムです。鉛筆(えんぴつ)の線を作る黒鉛(こくえん)という粉を紙から表面(ひょうめん)へ取り込み、汚れた部分をくずとして離します。まず黒鉛(こくえん)の行き先を追い、次に消しゴムの材料や作り方を見てみましょう。身近な文房具の名前や完成した形だけでは分からない工夫があります。

この話のポイント

  • 鉛筆(えんぴつ)の黒鉛(こくえん)は消しゴムの表面(ひょうめん)に引き離され、汚れた面がくずになることで新しい面が現れる。
  • 天然ゴム(てんねんゴム)系にも樹脂(じゅし)系にも、消すのに適した柔らかさ(やわらかさ)へ調整(ちょうせい)する材料が使われる。
  • 板状(ばんじょう)に押さえる方法と棒状(ぼうじょう)に押し出す方法があり、形を作る温度(おんど)も性能(せいのう)に関わっている。

黒い表面(ひょうめん)が、そのまま残らない理由

黒鉛(こくえん)は、炭素(たんそ)からなる黒い材料です。鉛筆(えんぴつ)で書いた字は、その粉が紙の目に入り込んで付いたものです。筆記具メーカーのトンボ鉛筆(えんぴつ)は、消しゴムの表面(ひょうめん)が、紙に付く力より強くその粉を引いて、紙から離すと説明しています。

消した後に消しゴムの面が黒くなるのは、紙にあった黒鉛(こくえん)が移ってきたためです。その汚れた表面(ひょうめん)が消しくずとなって離れ、次の新しい面が現れます。黒鉛(こくえん)を受け取ることと、受け取った面が離れることが組み合わされています。

この流れで見ると、くずが出ることは、消す仕事と切り離せません。線だけが消えてなくなるのではなく、紙の上から消しゴム側へ移り、その一部と一緒に離れているのです。手元に残るくずは、その移動の跡でもあります。

名前は消しゴムでも、材料は一種類ではない

トンボ鉛筆(えんぴつ)の原料(げんりょう)説明では、天然ゴム(てんねんゴム)を使うものと、プラスチックなどの樹脂(じゅし)を主材料にするものが分けて紹介されています。樹脂(じゅし)系の例には、塩化ビニル樹脂(えんかビニルじゅし)を使う消しゴムがあります。

天然ゴム(てんねんゴム)系には、生ゴム(なまゴム)に加えてサブという材料も使われます。サブは、材料をやわらかくする役割を持ちます。消しゴムメーカーのシードが紹介する会社の歴史でも、天然ゴム(てんねんゴム)系に用いる材料をやわらかくするものとして説明されています。

樹脂(じゅし)系では、可塑剤(かそざい)がプラスチックをやわらかくします。可塑剤(かそざい)という名前は難しく見えますが、ここでの役割は、消すのに適した柔らかさ(やわらかさ)へ材料を調整(ちょうせい)することです。主材料を知るだけでなく、どのような状態に整えるかも、消しゴムの働きに関わっています。

つまり、消しゴムという名前だけから、天然ゴム(てんねんゴム)製かどうかを判断することはできません。日常の呼び名と、実際に使われる材料は、必ずしも一対一ではないのです。

板から切るか、棒として押し出すか

消しゴムの形を作る方法には、たとえばプレス法と押し出し法があります。プレス法は、混ぜた原料(げんりょう)を加熱し、板状(ばんじょう)に押さえて成形(せいけい)する方法です。押し出し法は、加熱した材料を金型(かながた)の口から棒状(ぼうじょう)に出します。

シードの工程紹介では、圧縮(あっしゅく)する方法は一般的な四角形、押し出す方法は細長い形に適すると説明されています。材料を形にした後には、必要な大きさに切ったり、紙のケースを付けたりする工程もあります。

板から切り分けるか、細長く出してから切るか。完成した一個を見るだけでは分かりにくい違いが、工場の途中の形には表れています。どの方法かという名前だけでは、消えやすさの順位までは決まりません。

温度(おんど)と時間で、材料の状態も整える

形を作る工程は、外見を決めるだけではありません。トンボ鉛筆(えんぴつ)は、プレス法でも押し出し法でも、加工(かこう)温度(おんど)によって性能(せいのう)が変わると説明しています。

シードの製造(せいぞう)工程では、仕上がりに必要な硬さに合わせて、原料(げんりょう)を混ぜる時間や温度(おんど)を調整(ちょうせい)します。同じ材料名を並べても、どのような状態になるまで加工(かこう)するかが関わっているのです。

ここで製造(せいぞう)工程から分かるのは、形と材料名だけでは、仕上げるときの仕事を言い尽くせないことです。材料を選び、混ぜ、熱を加え、形にする段階を経て、使うときの状態に整えます。温度(おんど)も、必要な硬さや性能(せいのう)に仕上げるために調整(ちょうせい)する条件の一つなのです。

砂消しゴム(すなけしゴム)がインクを消すときは、別の作用(さよう)

同じ消すという言葉でも、砂消しゴム(すなけしゴム)でインクを扱う場合は区別が必要です。トンボ鉛筆(えんぴつ)の説明では、砂消しゴム(すなけしゴム)はインクの付いた紙の表面(ひょうめん)を削り取ります(けずりとります)。紙の表面(ひょうめん)を取り去るため、鉛筆(えんぴつ)の粉を引き離すときとは紙への作用(さよう)が違います。

おわりに

今回は、消しゴムが文字を消す仕組みについて、黒鉛(こくえん)の行き先からたどりました。紙の上の線は、魔法のように消えたのではなく、消しゴムの表面(ひょうめん)へ移り、その表面(ひょうめん)と一緒にくずになって離れていました。白くなった紙と、黒いくずは、一つの移動の前と後なのです。

その移動を続ける表面(ひょうめん)は、材料を選ぶだけで完成するわけではありません。柔らかさ(やわらかさ)を調整(ちょうせい)し、混ぜる時間や加工(かこう)温度(おんど)を整える工程が、手元の消しゴムにつながっています。机の上の小さなくずに目を向けると、取り去った鉛筆(えんぴつ)の粉と、次を消すために交代した表面(ひょうめん)が見えてくる。いつもの文房具も、消した跡だけでなく残したものを見ると、働き方が少し違って見えます。